作った先のストーリーを見据えて
新しく描く漆器の可能性

香川漆器
松本光太・土田百合香(さぬきうるしSinra)

約200年前に玉楮象谷を祖としてはじまった香川漆器。現在まで連綿と受け継がれ、五つの技法は国の伝統的工芸品にも指定されている。さぬきうるしSinraは、数ある事業者の中でも、伝統を大切に守りつつも、五技法を用いたギターや漆に石粉を混ぜた商品など新たな表現にも挑み、漆の可能性を広げている。代表を務める伝統工芸士・松本光太さんと、同じく伝統工芸士の土田百合香さんにお話を聞いた。

さぬきうるしSinraのはじまり

松本)高校の漆芸科を卒業後、香川県漆芸研究所や弟子入りを経て、さぬきうるしSinraを立ち上げたのは、独立してから12年後のことです。その頃、漆に携わりたいという情熱はあるのに、どうすればよいか分からず悩んでいる若者たちが多くいることを知り、衝撃を受けました。私も独立後に苦労した経験があり、みんなが漆で食べていける環境をつくりたいと立ち上げ、土田を誘いました。

答えのないものづくりに挑み続ける。

土田)同じように塗っても、気候や木の状態で仕上がりは変わります。調べても答えが出てこないことも多く、人に話を聞いたり、これまでの経験から最善の方法を探ったり。工夫のしがいがあって、そこが面白いと思っています。
松本)今までさまざまな表現に挑戦してきました。無理難題をどう形にするかを考え、試作を重ねていく過程は大変ですが、できることが増えていくのは純粋に楽しいですね。

香川漆器の将来を見つめて。

土田)ベテランの職人さんたちが培ってきた技術が、このままでは失われてしまうという危機感があります。香川ならではの技法やものづくりへの姿勢を受け継ぎ、次の世代に伝えていきたいです。
松本)作って終わりではありません。誰かの手に渡ることで、そこからまた新しい物語が始まる。その先で使う人のことまで思い描きながら作ることで、漆器の魅力はより伝わっていくのではないでしょうか。

「コストがかかっても、とにかく手を抜かない」。そうした姿勢で制作を続けるさぬきうるしSinra。「時代とともに変化できれば、伝統を超えていける」と熱い思いを語る松本さんと「自分でなんでもできるようになりたい」と試行錯誤を重ねる土田さん。その歩みは、香川漆器のさらなる可能性へと続いている。


さぬきうるしSinra
〒761-2101 香川県綾歌郡綾川町畑田3399
TEL 087-810-1327  
URL https://sinra.official.ec/

香川で生まれるもの:つくるひと