成長を祈る想いはそのままに、
時代に合わせて変化する張子虎。
張子虎
田井艶子(田井民芸)
子どもの健やかな成長を祈って作られる張子虎。ゆらゆらと揺れる振り子の首や鮮やかな黄色、大きく口を開けた姿はどこか朗らかで、いかにも讃岐らしい工芸品だ。伝統工芸士・田井艶子さんはこの道56年。技法や道具を受け継ぎながら、伝統的な姿だけにとらわれず、彩色しない古文書仕立ての虎や、小さな豆虎キーホルダーなど様々な作品制作に取り組んでいる。
時代を映し出す虎の顔。
こちらに嫁いできて張子虎を作り始めました。私で5代目です。当時はベテラン職人が他にたくさんいたので、新人の仕事は糊付け。そうやって段々仕事を覚えて今に至ります。家業だからここまで続けてきましたね。虎の顔は世代ごとに少しずつ違います。男性が描くと勇猛な、讃岐弁でいう「がいな」顔。女性だと少し優しげな顔になってね。今の時代はかわいい系のものが多いから、虎の顔も自然と柔らかい感じになりますよね。
張子虎を通した交流は、大変だけど面白い。
仕事には真摯に、真面目に取り組むということを大切にしています。それから楽しくすること。喧嘩したりしかめっ面したりしていたのでは、虎の表情にも表れてくると思います。正直、1個作り終わったら「やれやれ、やっとできた」という気持ちですが、高校生と一緒に制作体験したり、瀬戸芸にも出たりして若い人たちと交流するのは楽しいですね。大変だったけど面白くて、とてもいい思い出です。
材料や道具は、年々手に入りにくくなる。
最近は原材料の確保が一番難しいです。張り子には明治初期以前の和紙を使用しますので、その確保は年々厳しくなっています。最近では、膠(にかわ)や胡粉(ごふん)を作るところが減っているし、それらを濾すための「すいのう(ふるい)」も手に入りにくい。既存の固定した仕入れから広く仕入先を開拓し、材料や道具を確保しています。見つけたらまとめて手に入れて、大切に大切に使っています。
工房に入ると胡粉で真っ白なパーツがうず高く積まれている。奥では田井さんと職人の綾静子さんが座り、手分けして絵付け中だ。いつも優しく、ほのぼのとした語り口の田井さん。「大変よ~」と言いながらも、方々のイベントに呼ばれては制作体験をしたりキャラクターとコラボしたりと、張子虎を通してものづくりの面白さを伝えている。
田井民芸
〒767-0032 香川県三豊市三野町下高瀬426-6
TEL 0875-72-4978
URL https://taimingei.com/