使う人のことを考え、細やかに丁寧に。
気遣いが伝わる丁寧な仕事ぶり。

桐箱
道久常夫(道久桐箱店)

「こんぴらさん」のお膝元、昔ながらの静かな住宅街に佇む道久桐箱店。工房内には仕上がったばかりの桐箪笥や桐箱が並び、伝統工芸士・道久常夫さんが作業を進めている。桐箱に使うのは桐、接着剤、木釘だけ。シンプルな道具とシンプルな材料、無駄のない動きで着々と仕上がっていく桐箱。一見単純に見えるが、使うときのことを考えて工夫が散りばめられている。道久さんらしい、優しい心遣いだ。

ものづくりが当たり前の生活。

両親が桐箱の製造を始めたので、生まれたときから桐箱づくりは生活の一部でした。当時は桐箱の職人もまだ多かったな。昔からあまり人前に出るタイプではなく、職人ならあまり人と話さなくてもいいんじゃないかと思って家業を継ぐことにしました。高校時代は讃岐一刀彫(こんぴらさん周辺で盛んな伝統工芸)の工房に行って何かを作ったりもしていて、引っ込み思案だけどものづくりは好きでした。

どんなものができるかな、と自分でも楽しみです。

「こんなものは作れる?」という依頼には最大限応えたいです。お客さんのオーダーから新しい発想をもらうこともあります。そういうときは自分でも完成が楽しみです。まずは試作を作ってみて意見をもらって、最終的な形を決めていきます。飾り棚なら小物を置いてみてどう見えるか、米びつなら取っ手や蓋の形をどうするかなど、現物を見てみて確認してもらいます。

使いやすい工夫を細やかに。

少しでも良いものをつくろう、といつも心に決めています。最新の機械はないけれど、手元にある道具で形にできるのが桐箱の良いところです。経年で反ることを見越して、接着剤は端だけにつけて余裕を持たせたり、つげの釘で留めて接着力を高めながらも、見た目が目立たないようにしたりと工夫しています。蓋を閉めやすいよう蝋を塗る、収まりがいいように引っ掛かりを削るなど、実は細かい細工をしています。

「この工房は三光鳥の鳴き声が聞こえるんよ」と外を見上げる、動物好きの道久さん。近年はフリーマーケットサイトを通じて県外から依頼があり、桐箪笥を作ってほしいと直接工房を訪ねてきたお客さんもいたそう。手を止めて「喜んでもらえて良かった」と笑みをこぼし、再び作業の続きに戻っていた。


道久桐箱店
〒766-0004 香川県仲多度郡琴平町榎井676
TEL 0877-75-6418

香川で生まれるもの:つくるひと