地域の誇りと想いを背負って、
讃岐の獅子舞文化を支える名脇役。
讃岐鋳造品
多田豊(有限会社多田機工)
「コンコン、チキチ♪」秋になるとどこからともなく聞こえてくる鉦(かね)の音。香川の風物詩、祭りの獅子舞に欠かせない道具だ。鉦の音色は獅子組ごとに異なり、地域の人にとっては自分の組の目印であるとともに、誇りにもつながっている。伝統工芸士・多田豊さんは「獅子のように吠える」と先代が付けた「ライオン号」という称号を守り、昔ながらの手法で良質な鉦を作り続けている。
香川の獅子舞文化を支え続けて。
香川の獅子舞は大戦前後に衰退しましたが、昭和50年頃から再興していったという経緯があります。祖父の代から農機具や釣り鐘を鋳造しており、父の代から鉦を復刻するようになりました。獅子舞で力いっぱい鉦をかき鳴らすというのは香川独自のもの。割れることもありますよ。地域によって大きさが違ったり、組によって好みの音色も違います。できる限りは色々な要望に応えようと思っています。
鉦の音色は作り始めの時点で決まる。
鉦はおよそ銅9対錫1の合金。その割合によって音色が左右されます。厚みも大事です。厚めに作って後から削ったのでは良い音にはならない。鋳込み(いこみ)の段階で鉦の出来は決まっているようなものです。流し込んだ合金が冷えたら表面の黒皮を削って出来上がりです。その時々の気候によって冷えるスピードが変わるので、それで音が変わったりもする。叩いてみて好きな音を選んでもらいます。
よく鳴ると喜んでもらえると嬉しい。
工場は高松ですが、県内各地から注文に来てくれる。修理もします。割れたものは一旦とかして、足りない材料は足して鋳造し直します。「よぉ鳴る!」と言われたら嬉しいですね。会社までお披露目の獅子舞を見せに来てくれる組もありますよ。自分の作った鉦がどれかは、聴いたらだいたい分かります。「ずっと作ってくれ」という声が多いので、続けられる限りは続けていこうかと思います。
一度は鋳造を辞めようと思ったこともあったが「県外の業者では不満足」という声を受け今も続けている。香川ならではの獅子舞文化をよく知るからこそ様々な要望に応え、地域密着のものづくりができる。県内の鉦は今やほとんど多田機工製だという。磨き上げられた鉦はぴかぴかに輝き、ハレの舞台を待っている。
有限会社多田機工
〒761-0301 香川県高松市林町148-12
TEL 087-867-2010
URL https://tadakiko.net/