香川の風土を映す染め物。
その新たな歴史を作り続ける。
讃岐のり染
大川原誠人(有限会社大川原染色本舗)
「染」ののれんが目印の大川原染色本舗。創業220年超の讃岐のり染の老舗だ。元々は高松城下で染め物屋(紺屋)が軒を連ねた紺屋町にあり、戦後に目抜き通りであった今の場所へと移転。時代に求められる染め物を手がけながら、技術を今へと受け継いできた。伝統工芸士・大川原誠人さんは7代目。職人でありながらアーティストとしての顔も持ち、異業種とも交流しながら様々な染色表現に取り組んでいる。
地域に密着したのり染のあり方。
香川県の油単は非常にバラエティに富んでいます。絹製なのも珍しい。絹は染料が鮮やかに発色します。一方で雨や泥が当たると染料が化学変化したり生地が傷んだりする場合があるので、取扱いに注意が必要です。そうした道具の扱い方を含む文化の継承も課題ですね。秋祭りで使う獅子舞は、五穀豊穣を感謝して神様へのお礼として奉納されるものですから、のりに使う餅米はできるだけ地元で収穫した餅米などを使って作っています。
職人仕事と自己表現は車の両輪。
芸術大学で染色を学びましたが、芸大は自己表現の手段を学ぶ場。対して職人はお客さんのイメージを形にするのが仕事ですから、我を出してはいけない。若いときはこのギャップに葛藤しました。仕事終わりや休日に自分の創作をするということを何十年も続けるうちに、職人仕事で技術が磨かれ、自分の表現も洗練されるというようにバランスが取れるようになりました。こうした積み重ねがオリジナル品など今のものづくりに繋がっていると思います。
完成はこれと定めず、年々進化していく。
伝統工芸は長く作り続けられてきた熟成された技術です。でも使う人から見れば古臭くなっていないでしょうか。やはり今の暮らしに合わせて新しく変化していかないと後世に残すことは出来ないと思います。また最近では、お客様からの色や柄の注文が細かく複雑になってきています。「うちは今まで通りのものしかできません」と言ってしまうと、それでは進歩がなく、お客様にも喜んでもらえません。難しい柄の油単を悩みながら苦労して染め、それがお祭りで使われるのを見に行った時、獅子組の人に「こんなきれいなものができて、感動してみんなで泣いたんですよ」と言われ、本当に一生懸命染めて良かったなあと嬉しい気持ちになりました。
伝統工芸士の父・静雄さんの渡米を機に、家業の価値に改めて気づいた青年時代を経て、様々な人と交流しながら、職人としての技術と自身の表現力とを常に発展させてきた大川原さん。「ここ最近、工芸が注目されていますよね。職人というあり方が見直されているのかな」と語る。「再びアメリカで展示会を」。その夢の実現はきっとそう遠くない。
有限会社大川原染色本舗
〒760-0061 高松市築地町9-21
TEL 087-821-5769
URL https://www.ok-flag.co.jp/