さまざまに形を変える
打出し銅器の世界に魅せられて。
打出し銅器
吉原信治郎
カンカンカンと心地よいリズムが工房に響き渡る。一人黙々と金槌を振るうのは、県内唯一の打出し銅器の伝統工芸士・吉原信治郎さんだ。一枚の銅板を叩き、さまざまな形を生み出す打出し銅器の世界に魅せられ、吉原さんが制作を始めたのは50歳を過ぎてから。制作に留まらず、道具の設計図まで自ら引き、緻密な計算と尽きない好奇心をもってものづくりに向き合う姿がそこにあった。
幼いころからのものづくりへの好奇心
もともと、木工や金工などのものづくりが好きでしたが、それとは別の道に進んでいました。転機となったのは、55歳の時に出会った、伝統工芸士・大山柳太さんによる打出し銅器の実演です。一枚の銅板から、なぜこの形が生まれるのか。その不思議さに心を奪われ、気づけば次々と質問を重ねていました。すると、大山さんが主宰する教室に誘ってくださり、そこから20年以上制作を続けています。
同じものを寸分違わずに作る
作ったものはすべて、記録として残しています。銅板からいきなり形ができあがるわけではないので、どうすれば完成形にたどり着けるのかを、最初から考えなければなりません。師匠である大山さんはよく「叩いて形ができた、ではだめだ」と言っていました。職人であれば、同じものを寸分違わずに作れなければならない、と。その教えが今の制作の基になっています。
こだわりをもって大切に使ってほしい
きれいに仕上がったときは、やはり嬉しいです。その一方で、やり直しがきかない難しさもあります。実際に作ってみても銅板が足りなければ、そこで終わり。それが一枚の銅板から形を生み出す打出し銅器ならではの厳しさです。最近は、銅製品を使う人も少なくなりましたが、きちんと手入れをすれば、長く使い続けられます。だからこそ、こだわりをもって大切に使ってもらえたら嬉しいですね。
道具や設計図が整然と並ぶ吉原さんの工房。そこには、師匠・大山さんから受け継いだ道具も多く並ぶ。その道具や技とともに、大山さんが続けてきた教室も引き継いだ。今も希望者が打出し銅器に触れられる場所を守り続け、吉原さん自身がそうであったように、次の世代へと繋がるきっかけをつくっている。
吉原信治郎
〒760-0072 香川県高松市国分寺町新居1300
TEL 090-7582-4851